2024/10/30
親知らずが生えていると歯並びが悪くなる?抜歯の必要性についても解説!
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矯正治療を行ううえでは、ボーンハウジングの範囲で歯を移動させることが重要となります。ボーンハウジングを意識せず治療を行うと、歯肉退縮や歯根露出などさまざまなリスクが生じます。歯肉退縮は、虫歯や知覚過敏を引き起こす原因ともなり得るため、注意しなければなりません。
当記事では、ボーンハウジングの概要や意識するメリット、歯肉退縮のリスクや対策方法などについて解説します。記事を読むことで、ボーンハウジングを意識することの大切さや、歯肉退縮を防ぐ具体的な方法がわかるでしょう。
ボーンハウジングとは、唇舌的あるいは頬舌的な歯槽骨の枠のことを指します。
歯科治療では、いかなる治療においてもこの歯槽骨の枠内から歯が逸脱しないで治療を行うことが大切とされています。矯正治療では、ボーンハウジングの範囲内で歯を動かすように治療計画を考え、実際にもこのボーンハウジング内で歯を移動させるようにしなければなりません。
前歯の歯槽骨は薄めとなっていることから、歯を移動した際に、とりわけボーンハウジングからはみ出しやすい傾向にあります。ボーンハウジングから逸脱すると、歯肉退縮などを引き起こします。見た目や健康に悪影響を与える可能性が高まるため、注意が必要です。
顎の骨には、歯の根っこがはまっている穴が空いており、この穴のことを歯槽と呼びます。そして、歯槽を構成する骨が歯槽骨です。歯槽骨は主に、歯を支える役割を担っています。
歯周病にかかると、歯の周囲にある組織に炎症が発生し、歯茎が痩せるなどの現象が発生します。こうした症状は、内部にある歯槽骨が溶けることによって起こるものです。
歯周病により、歯槽骨が吸収してしまうと元に戻ることはありません。
歯槽骨は海綿骨と皮質骨で構成されていて、海綿骨は骨の内側の部分で、網目状に広がる骨からできていて梁(骨梁と言います)のようになっています。
一方、皮質骨は骨の外側の部分で、非常に固い組織です。歯を移動する場合に歯根が皮質骨にぶつかってしまうと歯根が吸収してしまう可能性があるため、歯の移動は海綿骨の範囲内で行うようにすることが大切です
歯科医院におけるCTとは、顎や歯の周りにある神経・骨・血管を撮影できる装置のことです。従来のX線とは異なり、3次元的な画像が撮影できるため、より正確に口の中の様子を確認できるようになりました。
CTを用いることで、歯・顎周りの骨や神経の位置を正しく把握できるため、歯槽骨の幅や歯根の位置も正確にチェックすることが可能です。また歯槽骨内の皮質骨の厚みなども確認することができるため、事前に歯の移動のシミュレーションを正しく行った上で治療を実施することにより、ボーンハウジングからの逸脱を防ぎやすくなります。
ボーンハウジングを意識して治療を行うことには、以下のようなメリットがあります。
<ボーンハウジングを意識した治療をするメリット>
・➀歯茎が下がりにくい
・➁歯根の吸収が起きにくい
・➂矯正後に後戻りしにくい
一つずつ解説していきます。
ボーンハウジングを意識せずに治療を実施すると、歯が骨の範囲を超えて動くことになり、歯茎が下がりやすくなります。ボーンハウジングを意識することで、歯槽骨から歯がからはみ出にくくなり、歯肉退縮や歯根吸収などのリスクを防ぎやすくなるのです。
歯茎が下がると知覚過敏になったり、虫歯になりやすくなったりとさまざまな問題が生じるため、ボーンハウジングを意識することは、歯の健康を守るうえで重要であることがわかります。
歯根の吸収とは、歯の根っこが溶けて消失したり、短くなったりする現象のことです。歯根の吸収が重度になると、歯が揺れたり、歯周病の進行に伴って歯が抜けたりするリスクもあります。ボーンハウジングを意識した治療を行うことで、歯根が皮質骨という硬い骨の部分にぶつからないようにすることで、歯根吸収のようなトラブルも防ぎやすくなるでしょう。
歯列矯正における後戻りとは、治療によって整えた歯並びが元に戻る現象のことです。歯列矯正が終わった直後の歯は、周りにある骨がまだ安定しておらず、動きやすい状態となっています。そのため、歯が治療する前の位置に戻ろうと動き、後戻りが発生してしまうのです。
ボーンハウジングを意識して歯を並べると、歯肉退縮や歯槽骨退縮、歯根露出などが起きにくくなるため、歯が安定しやすくなり、後戻りしにくい状態を作れます。後戻りしてしまうと、もう一度装置を付けて矯正の再治療が必要になってしまいます。歯を安定させて、きれいな歯並びをキープするためにも、ボーンハウジングを意識した治療は重要だといえるでしょう。
歯肉退縮とは、歯の周りを覆う歯周組織や歯茎が下がり、歯根が露出する状態のことです。歯肉退縮は主に、ボーンハウジングを逸脱した矯正治療や歯周病の発症、過度なブラッシングなどによって起こります。
歯肉退縮やそれに伴う歯根露出が起こると、口周りに以下のようなリスクをもたらします。
<歯肉退縮・歯根露出のリスク>
・見た目の問題が生じる
・虫歯のリスクが高まる
・知覚過敏になりやすい
一つずつ解説していきます。
歯肉退縮が起こると、今まで歯茎に覆われていた歯根が露出するため、歯が長くなったように見えます。特に前歯で歯肉退縮が起こった場合、目立ちやすいため、ほかの歯以上に見た目の問題が深刻なものとなるでしょう。前歯で起こると、歯が大きくなったような見た目になります。
このように歯肉退縮が引き起こされると、歯が通常とは違って見えることで違和感が生じ、口元の印象が悪くなることにつながります。 歯が長く大きく見えるだけでなく、以下のような現象を引き起こすケースもあるでしょう。
・歯茎が少なく見える
・歯根が露出して見える
・歯同士の間にできた隙間(ブラックトライアングル)が目立ちやすくなる
歯と歯茎のバランスが悪くなることで、不健康に見えたり、老けた印象を与えたりすることにつながります。 こうした影響は、顔の外見を気にする方にとっては大きな問題点となるでしょう。
歯は、外から見える「歯冠」という部分と、外から見えない「歯根」という部分に分かれています。歯冠は「エナメル質」と呼ばれる硬い組織に守られているのに対し、歯根にはエナメル質がありません。そのため、歯根は歯冠よりも、ダメージを受けやすい部位だといえます。
歯根が歯肉退縮でむき出しになると、エナメル質のない繊細な歯根はすぐに細菌が繁殖してしまいます。細菌が繁殖しやすくなることで、虫歯になるリスクが高まるのです。さらに虫歯が進行すれば、歯髄炎・根尖性歯周炎といった別の症状を引き起こすこともあるでしょう。
また、歯肉退縮はブラックトライアングルができる原因にもなります。ブラックトライアングルとは、歯と歯の間の根元部分に生じる三角形の隙間のことです。
ブラックトライアングルができると、この隙間に食べかすが挟まって残りやすくなります。その結果、食べかすに含まれる糖質を虫歯菌が摂取して増殖し、酸を出して弱い歯質を溶かすことにつながります。これにより、虫歯になりやすくなるのです。
さらに、食べかすに歯周病菌が集まってプラークができ、歯周病を引き起こすことにもつながります。
歯を構成する組織の一つとして、「象牙質」と呼ばれる外部からの刺激に感受性が強い組織があります。象牙質は普段歯茎に覆われているため、冷たいものや熱いものを食べたり飲んだりしても、痛みを感じることはありません。
しかし、歯肉退縮によって歯茎が下がり、歯根がむき出しになると象牙質が露出します。象牙質が、口内に入ってきた冷たいものに直接触れるようになるため、痛みを感じたりしみたりしやすくなります。
歯肉退縮を引き起こす主な原因としては、以下のようなものが挙げられます。
<歯肉退縮を引き起こす主な原因>
・矯正治療
・歯周病
・過度なブラッシング
・噛み合わせ
・歯ぎしり・食いしばり
以下からは、それぞれの詳細と対策方法について、詳しく解説していきます。
前述の通り、矯正治療では、ボーンハウジングの範囲で歯を動かすことが基本です。ボーンハウジングから逸脱すると、歯肉退縮を引き起こすリスクがあります。
矯正治療を行う際は、ボーンハウジングを意識した治療を行ってくれる、信頼性の高い歯科医院に依頼することが大切です。ボーンハウジングを意識した治療の実施によって、歯肉退縮の発生リスクを下げやすくなります。
歯科医院を選ぶときには、CTの設備が整っているか・深い経験や知識を持った歯科医師が在籍しているかなどを慎重に確認しましょう。
歯周病とは、歯茎で細菌感染が発生し、炎症を生じさせる病気のことです。歯周病は、歯肉退縮を発生させる特に大きな原因です。歯周病になると歯茎が下がり、さらに症状が進むと、歯槽骨までもが破壊されます。
歯周病は日本において、成人の80%ほどがかかっているとされている深刻な病気です。歯周病による歯肉退縮を防ぐためには、日ごろから歯茎の健康を維持し、歯周病にならないよう注意することが大切です。
基本的なこととして、まずは毎日しっかりと歯を磨きましょう。歯ブラシだけでなく、ときには歯間ブラシやフロスも利用し、歯ブラシでは届きにくい場所を手入れすることも重要です。さらに、歯科医院で定期的に検診を受け、歯周病があったら早期発見してもらうこともポイントとなります。
ブラッシングをする際の力が強すぎると、歯肉退縮を引き起こしやすくなります。強い力でブラッシングをすることで、歯茎にダメージを与えてしまうためです。歯茎を痛めるだけでなく、歯の表面を覆うことで歯を守ってくれているエナメル質にもダメージを与えるため、適度な力でブラッシングを行うことが大切です。
噛み合わせが悪い状態にあると、すべての歯や歯茎へ平等に力がかかりません。一部の決まった歯や歯茎に、過度な負担がかかることになります。その結果、歯茎に炎症が起こり、歯肉退縮を引き起こしやすくなるのです。
矯正治療を行うことで、噛み合わせの悪さを改善できます。先ほどの通り、矯正治療を行う際は、信頼できる歯科医院に相談しましょう。
歯ぎしりや食いしばりを日常的に行っていると、歯や歯茎に大きな負担が生じます。歯ぎしりによって歯にかかる力は、100kg以上になることもあります。大きな力がかかったことで、歯茎が炎症を引き起こし、歯肉退縮が起こるのです。
歯ぎしりや食いしばりは歯肉退縮を引き起こすだけでなく、歯に亀裂を生じさせたり、破折(割れたり折れたりすること)させたりするリスクもあります。
歯ぎしり・食いしばりを引き起こす原因の一つは、ストレスです。運動やストレッチを定期的に行ったり、趣味でリフレッシュしたりと、日ごろのストレスを解消する時間を作ることで改善しやすくなります。
ボーンハウジングを意識した治療を行うことで、歯根の吸収や後戻り、歯肉退縮を防ぎやすくなります。矯正治療を行う際は、ボーンハウジングを意識した治療を行ってくれる歯科医院に相談しましょう。
目白歯科矯正歯科は、日本矯正歯科学会の認定医が在籍する歯科医院です。矯正歯科を専門で学んできた院長が経営しており、矯正に特化しているため、信頼性の高い治療を実施可能です。ボーンハウジングから逸脱するリスクを抑えた、安心感のある治療を受けたい方はぜひご相談ください。
監修:山澤 秀彦(やまさわ ひでひこ)目白歯科矯正歯科/院長