マウスピース矯正での部分矯正はできる?メリット・デメリットや治療できる症例を解説

マウスピース矯正での部分矯正はできる?メリット・デメリットや治療できる症例を解説

マウスピース矯正での部分矯正はできる?メリット・デメリットや治療できる症例を解説

前歯の歯並びが少しだけ気になるという方は多いのではないでしょうか?少しだけ気になるのにワイヤーを着けるのには抵抗があるから矯正を諦めている方もいらっしゃるかと思います。その様な方はぜひマウスピースでの部分矯正を検討してみてください。マウスピースでの部分矯正は食生活やスポーツや楽器の演奏など普段のご自分のライフスタイルを変えることなく、また見た目などを気にすることなく手軽に始めることができる治療方法だといえるでしょう。

 

しかし、マウスピース矯正での部分矯正のデメリットもあわせて把握しておかないと、「思っていた仕上がりと違う」と後悔してしまうかもしれません。

 

そこで今回は、マウスピースで行う前歯の部分矯正について解説します。メリット・デメリットや治療できる症例もあわせて解説するので、ぜひ参考にしてください。

 

前歯だけ部分矯正をマウスピースでできる?

ハテナのプレートを持つ手

マウスピース矯正での部分矯正とは、気になる一部分のみに特化して行うマウスピースを用いる歯列矯正のことです。前歯の小さながたつきや歯並びの乱れを改善する程度であれば部分矯正で対応することができますが、前歯の歯並びが気になるすべての方にできる治療方法ではありません。

 

部分矯正は歯並びを改善して見た目を整えたり、清掃性を高めたりすることを主な目的としています。そのため、奥歯の歯並び改善や噛み合わせの調整はできません。また前歯のデコボコや突出が大きい場合には部分矯正では対応することができません。症例によっては、全体矯正が向いていることもあるでしょう。

 

そもそもマウスピース矯正での部分矯正って何?

マウスピースで前歯の部分矯正を行う場合でも、歯列全体をマウスピースで覆います。全体矯正でも部分矯正でもマウスピースの形は同じです。

 

では、部分矯正と全体矯正では何が違うのでしょうか?

 

その違いは、マウスピースの枚数制限です。具体的にはマウスピース型歯科矯正装置(インビザライン・薬機法対象外)では、全体矯正に対応できるインビザラインコンプリヘンシブでは最大99枚までマウスピースを作ることができるので様々な症例でも治療することができます。しかし部分矯正に対応するインビザラインライトのプランでは14枚までしかマウスピースを作ることができません。そのため軽度のデコボコや突出しか治すことができないのです。

 

前歯だけの部分矯正にかかる費用は?

問診を受ける様子

マウスピースの部分矯正は、全体矯正と比べて、安い費用で治療を受けられます。

 

それぞれの矯正治療にかかる費用相場を、以下の表にまとめました。比較としてワイヤー矯正の部分矯正・全体矯正にかかる費用もまとめております。

 

マウスピース矯正 ワイヤー矯正
部分矯正 20~60万円 20~50万円
全体矯正 70~120万円 60~150万円

 

ただし、医院の方針や地域、症例によっては費用が大きく異なることがあります。矯正治療代の他にも、調整費を都度払いしたり、補助装置の追加が必要になったりするケースもあるため、治療を始める前に費用の内訳を確認しておきましょう。

 

また、不注意や故意によって装置を破損させたり紛失したりした場合は、追加費用の支払いが発生することがあります。歯科医師の指示をよく守りながら、スムーズに治療を進めることで余計な費用の発生を抑えられるでしょう。

 

マウスピース矯正で前歯だけの部分矯正を行うメリット

歯のレントゲンを見ながら話す様子

部分矯正をマウスピース矯正で行う場合ワイヤー矯正と比較した場合のメリットは、主に以下4つのメリットがあります。

 

  1. 目立ちにくい
  2. 衛生的である
  3. 痛みが少ない
  4. 金属アレルギーの方でも安心できる

 

目立ちにくい

1つ目は、目立ちにくいという点です。矯正に使う装置の中には、歯の表側にワイヤーなどを取り付けることによって、歯を見た際すぐに矯正をしていると気づかれてしまうものもあります。

 

その一方で、マウスピース矯正で使うマウスピースは透明です。目立つ装置がないため、周りから見た際すぐには装置をつけていると気づかれにくい傾向にあります。矯正していることを隠したい方や、接客業・モデルなどといった人前に出ることの多い仕事をしている方におすすめです。

 

衛生的である

2つ目は、衛生的である点が挙げられるでしょう。マウスピースは、患者さん自身が取り外しを自由に行えます。歯磨きや食事の際に外せば、「装置が邪魔でうまく歯が磨けず、汚れを磨き残す」「食べかすが装置に引っかかって、口内に汚れが残る」といったリスクが低減されます。

 

さらに、取り外して装置自体を洗浄することも容易に行えるため、常に衛生的な状態に保てるでしょう。

 

痛みが少ない

3つ目は、痛みが少ない点です。短時間で大きく歯を動かそうとすると、どうしても痛みが生じやすくなってしまいます。しかしマウスピースは、1回で一気に動かすのではなく、少しずつ歯を動かしていく治療です。そのため、歯が動くことによる痛みを感じにくい傾向にあります。

 

マウスピースを作成する際は、患者さんの口の中の3Dデータを使用して作るため、患者さんそれぞれに合ったマウスピースとなり、違和感や大きな痛みなくフィットしてくれるでしょう。

 

金属アレルギーの方でも安心できる

4つ目は、金属アレルギーの方でも安心して治療が行える点です。歯列矯正の中には、金属を使用した装置で治療を行うものも存在します。金属を口の中に入れる治療法だと、金属アレルギーの方は体の痒みや発疹といった症状を引き起こすこともあるでしょう。

 

しかしマウスピース矯正で使用するマウスピースは、基本的に金属を使用していません。そのため、アレルギーによる症状が不安な方も安心して治療が行えます。
 


 

マウスピース矯正で前歯だけの部分矯正を行う際の注意点

人差し指を立てる歯科衛生士

マウスピース矯正での部分矯正にはいくつかのメリットがありますが、症例によっては向いていないことがあります。無理に前歯の部分矯正を行ってしまうと、失敗や後悔につながることもあるでしょう。メリットばかりが先行して決断を焦ってしまわないよう、デメリットもよく理解しておくことが大切です。

 

前歯の部分矯正のデメリットには、以下のようなものがあります。

 

  1. 治療範囲が限られる
  2. 思った仕上がりにならない可能性がある
  3. 噛み合わせが悪化する可能性がある
  4. 歯のエナメル質を削るケースが多い
  5. 前歯が突出してしまう可能性がある

 

では、それぞれのデメリットを具体的に見ていきましょう。

 

①治療範囲が限られる

マウスピース矯正での部分矯正ではデコボコが大きい症例や、噛み合わせの改善が必要な症例には向いていません。基本的には、顎の位置や噛み合わせを変える必要のない、非常に軽度な症例に向いている治療法です。

 

そのため、歯並びの状態によっては全体矯正を勧められることがあるでしょう。部分矯正で無理な治療を行うと噛み合わせが悪化する恐れもあるため、歯科医師とよく相談することが大切です。

 

②思った仕上がりにならない可能性がある

前歯の部分矯正では、 思いどおりの歯並びにならないケースが少なくありません。全体矯正と比べて妥協した治療計画を作成することになるため、全体的なバランスを考慮した治療が難しくなるからです。

 

あくまでも一部の歯並びを改善する治療法のため、全体矯正と比べて完成度の低い仕上がりとなります。矯正治療のゴールを高く設定している方には、向いていない治療法といえるでしょう。

 

③噛み合わせが悪化する可能性がある

部分矯正は全体矯正とは異なり、気になる部分だけの歯並びを改善します。部分矯正は奥歯を含む噛み合わせの矯正はできないため、基本的に噛み合わせまで考慮した治療は行わないことが一般的です。

 

部分矯正は噛み合わせに問題がない場合に適用される治療方法のため、噛み合わせを整える治療は行いません。あるいは無理に部分矯正を行ってしまい咬み合う範囲が少なくなってしまったり、上下の前歯が噛めなくなってしまう可能性もあります。 そのため、部分矯正でも問題がないかしっかりと見極めることが大切です。

 

④歯のエナメル質を削るケースが多い

部分矯正では、抜歯でスペースを確保したり、歯列全体を拡大したり、奥歯を後方に動かして歯を並び変えることができません。そのため、歯を動かすためのスペースが足りない場合は、エナメル質をわずかに削ってスペースを確保します。

 

削る範囲は歯に影響のない安全な範囲で、歯がしみやすくなったり虫歯になりやすくなったりするほどの量ではありません。 ただし、歯を少しでも削ることに抵抗のある方や、健康な歯質を残したい方には、向いていない治療かもしれません。

 

⑤前歯が突出してしまう可能性がある

部分矯正は限られた小さな範囲で歯を動かすため、骨格的な位置関係や顎・歯の大きさのバランスなどにより前歯が突出することがあります。全体の矯正治療ではデコボコしている度合によっては、歯を抜いてきれいに並ぶスペースを確保するか、歯を抜かない場合でも歯列の拡大や奥歯の後方移動で前歯が突出しないように並べることができます。

 

しかし、部分矯正では抜歯が適用されないため、スペース不足となり前歯が突出してしまうことがあるのです。 前歯の前突を避けたい場合は、治療を受ける前に歯科医師に確認するようにしましょう。

 

前歯のみの部分矯正が適した症例

OKのポーズをする女性

前歯の部分矯正は、噛み合わせに問題のない軽度な症例が適しています。自分が部分矯正に適しているかどうかの判断は、信頼できる歯科医師の診断に任せるようにしましょう。

 

具体的には、以下のような症例です。

 

  1. すきっ歯
  2. 軽度の出っ歯、受け口
  3. 矯正後の後戻り
  4. 軽度のガタガタした前歯

 

ただし、自分では噛み合わせに問題がないように感じても、部分矯正では治療が難しいと判断されることがあります。部分矯正が適用されるかどうかは、歯科医師の適切な診断に任せるようにしましょう。

 

また、一つの医院で部分矯正に適していないと判断されても、矯正専門医の診断では治療が可能なケースもあります。マウスピース矯正での部分矯正を強く希望する方は、複数の医院でカウンセリングを受けてみるとよいでしょう。

 

マウスピース矯正での部分矯正をおすすめできる人

女性の口元

マウスピース矯正での部分矯正は、適切な症例であれば少ない負担で治療が完了します。部分矯正で治療を検討している方は、次に紹介する項目に当てはまっているかどうか、確認してみましょう。

 

マウスピース矯正での部分矯正がおすすめできるのは、以下のような特徴の方です。

 

  1. 奥歯の噛み合わせに問題がない
  2. 矯正治療後の後戻りを治したい
  3. できれば費用を安く抑えて治療を受けたい
  4. 部分矯正のデメリットを理解している
  5. マウスピースをしっかり使うことができる

 

精密検査で奥歯の噛み合わせに問題がないと診断された方は、部分矯正で前歯の歯並びを整えられます。軽度の症例であるほど、治療期間や費用が安く済むケースが多いので、矯正治療の負担を軽減させながら歯並びの改善を希望する方に向いているでしょう。

 

また、過去に受けた矯正治療が後戻りして、少しだけ歯並びが乱れているような方にも部分矯正が向いています。インビザラインのようなマウスピース矯正であれば目立ちにくいため、口元の印象を変えずに後戻りの治療を受けられるでしょう。

 

またマウスピース矯正での部分矯正治療を受ける際は、部分矯正のデメリットを理解してから臨むようにしましょう。

 

マウスピース矯正での前歯のみの部分矯正をおすすめできない人

胸の前で×をする女性

部分矯正は歯科医師から適切症例であると判断された場合のみ、治療を開始できます。歯科医師に全体矯正を勧められた場合は、よく検討して治療を始めるようにしましょう。

 

前歯の部分矯正がおすすめできないのは、以下のような特徴の方です。

 

  1. 重度のガタガタや出っ歯、受け口
  2. 矯正治療のゴール設定が高い
  3. 骨格に問題のある歯並びや噛み合わせ
  4. 部分矯正のデメリットを理解していない
  5. マウスピースを指示通り使う自信がない

 

重度の症例や骨格に問題がある場合は、部分矯正は適用されません。部分矯正で無理な治療を受けることにより、歯並びや噛み合わせが悪化する恐れがあります。再治療をするとなると結果的に費用や治療期間の負担が大きくなる可能性もあるでしょう。

 

また、歯並びを整えてEラインを改善したいなど、矯正治療のゴールを高く設定している方にも向いていません。部分矯正は一部の歯しか動かせないため、根本的な治療には向いていないのです。

 

またマウスピース矯正での部分矯正のデメリットを理解していない人には、おすすめできません。

 

まとめ

マウスピース矯正での部分矯正は、全体矯正よりも挑戦しやすい治療方法ですが、向いている人・向いていない人がいます。しっかりと自分に合った方法であるか見極められないと、かえって時間や費用がかかることもあるでしょう。

 

噛み合わせが乱れてしまうと、最悪のケースでは全体矯正で治療を受け直す必要が生じてしまうことあります。そうならないためには、豊富な知識と実績があり、信頼できる歯科医師のもとで適切な診断を受けるようにしましょう。

 

目白歯科矯正歯科では、矯正治療の計画から経過観察まで、すべてを矯正歯科専門で経験を積んだ院長が担当しています。表側矯正だけでなく、裏側矯正、マウスピース矯正などさまざまな矯正タイプの対応が可能です。部分矯正での治療実績も豊富ですので、矯正治療に関するお悩みをお持ちの方、部分的な矯正治療について詳しく知りたい方は、お気軽にご相談ください。

 

監修:山澤 秀彦 (やまさわ ひでひこ) 目白歯科矯正歯科/院長

 

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