金属アレルギーでも矯正治療できる?起こりうる症状やおすすめの治療方法を解説

金属アレルギーでも矯正治療できる?起こりうる症状やおすすめの治療方法を解説

金属アレルギーでも矯正治療できる?起こりうる症状やおすすめの治療方法を解説

ネックレスやピアスをつけた際にかゆみを感じたことがある方は、金属アレルギーの可能性があります。「矯正治療を行ってみたいが、自分は金属アレルギーのため行えないのではないか」と不安に思っている方も多いでしょう。

 

しかし歯列矯正の中には、金属アレルギーの方でも行える治療の方法も存在します。マウスピース矯正であれば、装置に金属を含んでいないため、安心して治療可能です。

 

当記事では、金属アレルギーの方が矯正治療を行うことの可否、金属アレルギーの方におすすめの治療方法、治療によって起こりうる金属アレルギーの症状などについて解説します。記事を読むことで、金属アレルギーがあっても安心して治療を行えるようになるでしょう。

 

金属アレルギーでも矯正治療できる?

丸とバツを持った女性

金属アレルギーを持っている方でも、ほとんどの場合は矯正治療が行えます。金属アレルギーの方にとりわけおすすめできる治療方法が、マウスピース矯正です。マウスピース矯正は装置に金属を使用しないため、金属によってアレルギー反応を起こすリスクがありません。

 

また、ワイヤー矯正であっても、金属アレルギーの症状が発生しにくいチタン合金を使ったワイヤーやブラケットを使用したり、セラミックを使用したブラケットを使ったりすることで、安心して治療を進めやすくなります。

 

ただし、チタン合金を使ったワイヤーやブラケットはあまり普及していないため、どこの歯科医院でも治療できるわけではありません。またセラミックブラケットは奥歯用がないため、セラミックブラケットを使う際も奥歯にはメタルブラケットを使います。

 

このように、金属アレルギーのリスクを完全に避けてワイヤー矯正を行うのは困難というのが実情です。こちらについては、後ほど詳しく解説します。

 

金属アレルギーの方にもおすすめできる矯正方法

丸を持った医師

金属アレルギーの方でもストレスを抑えて治療を進めやすい矯正方法は、以下の2つです。

 

  1. マウスピース矯正
  2. アレルギー対象金属使用しないワイヤー矯正

 

マウスピース矯正で使用するマウスピースは金属を含んでいないため、特におすすめできます。それぞれの治療方法の詳細について、順番に見ていきましょう。

 

マウスピース矯正

マウスピース矯正をする女性

マウスピース矯正は、金属アレルギーの方に最もおすすめできる矯正方法です。マウスピース矯正とは、透明なマウスピースを歯に取り付けて、歯並びを整える治療方法のことです。マウスピースには金属が使用されていないため、金属アレルギーを持っていても症状が出る心配はありません。

 

マウスピース矯正にはさまざまなブランドがあり、ブランドによっても費用や治療方法などが異なるため、比較検討してみてください。

 

マウスピース矯正は装置が透明であることから、目立ちにくく、周囲の人に治療していると気づかれにくいという魅力も持っています。接客業などの人前に出る仕事をしている人や、治療していると知られたくない方に向いているでしょう。

 

マウスピース矯正を行ううえで注意すべきなのは、患者さんによっては利用できないケースもある点です。

 

歯が小さくマウスピースが歯をしっかり覆うことができない場合、残っている歯が少ない場合や顎変形症の患者さんなど、一部の難しい症状を抱えている方はマウスピースで矯正できない可能性があります。マウスピースで対応できない方は、ほかの治療方法を選択しなければなりません。

 

マウスピース矯正は取り扱っていない医院もあるため、事前に調査しておくのがおすすめです。

 

ワイヤー矯正

ワイヤーやブラケットの素材などによっては、金属アレルギーが出るリスクを抑えてワイヤー矯正を行える可能性があります。ただし、ワイヤー矯正で使用するワイヤーには必ず金属が含まれている点には注意しなければなりません。

 

金属アレルギーの方におすすめできる治療法の1つとして、チタン合金が使われているワイヤー・ブラケットを使用する方法が挙げられます。というのも、チタン合金は金属アレルギーの症状が起こりにくいためです。

 

しかし一般的なワイヤー矯正では、ステンレス合金・コバルト・クロム・ニッケルを使った、従来のメタルブラケットがメインで使われています。これらの金属は、金属アレルギーの症状が起こりやすい傾向にあります。

 

チタン合金を使ったワイヤーやブラケットは一部のメーカーで販売されているのみで、ほとんど普及していません。一般的にはあまり使用されていないため、こうしたワイヤー・ブラケットで治療できる歯科医院を探すのは簡単ではないでしょう。

 

その他、セラミックを使ったブラケットを使用するのも1つの手です。ただし、セラミックブラケットに奥歯用はありません。そのためセラミックブラケットを用いても、奥歯にはメタルブラケットを装着するという点については注意が必要です。金属アレルギーがある場合は、セラミックブラケットとチタン合金のブラケットを併用することになるでしょう。

 

金属アレルギーを持っている方がワイヤー矯正を行う際は、どの金属に対してアレルギーがあるのか事前に調べておく必要があります。中には、複数の金属にアレルギー反応を起こす患者さんもいます。

 

事前にしっかりアレルギー検査をしておかないと、金属アレルギー対策が行われた装置を用いても、金属アレルギーが出てしまう可能性があるでしょう。重い金属アレルギーを持っている方は特に症状が出やすいため、心配であれば医師に相談してみるのがおすすめです。

 

矯正治療で起こりうる金属アレルギーの症状

矯正治療を行うことで体に生じる可能性のある金属アレルギーの症状としては、以下のようなものが挙げられます。

 

  1. 全身性の皮膚炎
  2. 口の中の粘膜疾患

 

上記のような症状は、学業や仕事に悪影響を及ぼすだけでなく、より重度の症状につながる可能性もあります。それぞれの症状についてしっかりと把握しておき、万が一治療中に症状が見られた際はすぐに医師へ相談しましょう。

 

全身性の皮膚炎

自分の手を触る女性

矯正治療は口の中で行う治療のため、口周りや口の中に症状が現れると思っている方も多いでしょう。しかし実際には、口以外に症状が出るケースの割合の方が多いとされています。歯科金属アレルギーにより引き起こされる全身性の疾患として、アトピー性皮膚炎や掌蹠膿疱症、湿疹や乾癬などがあります。歯科金属アレルギーは口の中の金属が原因であるのもかかわらず、口の中にはほとんど症状はでないで口からは遠い皮膚に症状が出ることが多いのです。

 

これは口の中の金属が口の中の粘膜や消化管から吸収されて血管を通って全身に運ばれて、到達した部位で汗などを介して炎症反応を起こすからといわれています。

 

口の中の粘膜疾患

奥歯を気にする老男性

歯科金属アレルギーは全身の症状として現れることが多いのですが、口の中にも症状として出ることもあります。歯科金属アレルギーが原因とされる疾患としては口内炎、口腔扁平苔癬などがあります。

 

口腔扁平苔癬とは、慢性的な経過をたどる原因不明の口腔粘膜の慢性炎症性疾患です。可能性は低いものの、放っておくと癌化する可能性もあるといわれています。原因については明確にはわかっておらず、遺伝的、免疫学的、歯科金属による接触性アレルギー、C型肝炎ウイルス感染、内分泌異常、精神的ストレスなどの要因が関係しているとされています。

 

矯正治療中は装置が粘膜に接触して口内炎になることも多いのですが、口内炎や粘膜の違和感が中々治らない方は担当医に相談してみましょう。

 

金属アレルギーが不安な方は事前に医師に相談する

医師を話をする様子

治療で金属アレルギーの症状が現れると、かゆみや痛みなどの症状に苦しむことになってしまいます。こうした症状が発生すると、仕事や家事も手につかなくなってしまうでしょう。安心して治療が行えるよう、金属アレルギーの症状が心配な方は、事前に医師へ相談しておくことを強くおすすめします。

 

先ほどの通り、どのような装置を用いて治療を行っているか・どういった治療方法が用意されているかといったことは、歯科医院によってもさまざまです。金属アレルギーが不安な方は、アレルギー症状があっても行える治療方法が用意されているかを確認する必要があります。

 

治療を行う前には、歯科医師に自分の悩みや不安を相談できるカウンセリングが行われるケースがほとんどです。カウンセリングの際に、自身が金属アレルギーを持っていることを伝え、アレルギーがあっても行える治療方法が用意されているかを尋ねましょう。

 

カウンセリングで歯科医師に相談を行うことで、「患者さんに寄り添ってくれる医師か」「病院の雰囲気は良いか」といったことも把握でき、あらゆる面で今後の治療も進めやすくなります。カウンセリングまでは無料で行っている歯科医院も多いため、ぜひ一度お気軽に相談してみてください。

 

必要に応じて金属パッチテストを行う

ピアスをする女性

金属アレルギーが心配な方は、金属パッチテストを受けるのがおすすめです。金属パッチテストとは、皮膚の表面に金属を含有した試薬を貼り付けて、アレルギー反応が出るかをチェックするテストのことです。

 

金属パッチテストを実施することで、自分がどういった金属元素に対してアレルギーを持っているのかをチェックできます。自分のアレルギーについて詳しく確認できれば、「この装置であればアレルギー反応が起こりにくい」といったことが医師の方で判断しやすくなるでしょう。

 

金属パッチテストは皮膚科で行いますので、歯科医院から提携している皮膚科へ紹介してもらうようにしましょう。

 

金属アレルギーの方がワイヤーを使用する場合の手順

金属アレルギーの方がワイヤーを使用して矯正治療を行う場合、以下の手順で治療を進めていきます。

 

  1. 金属アレルギーの種類を調べる
  2. アレルギー反応の出ない装置を選択する

 

それぞれについて、詳しく見ていきましょう。

 

➀金属アレルギーの種類を調べる

アレルギー反応を起こす金属の種類は人によって異なるため、まずはどのような金属アレルギーなのかをカウンセリングで確認します。患者さんが把握していない場合は、パッチテストを実施することになるでしょう。

 

➁アレルギー反応の出ない装置を選択する

パッチテストを受けてどの金属にアレルギーがあるのかを調べたら、アレルギー反応の出ない装置を選択します。なお、パッチテストの結果に応じて装置を選んでも、必ずアレルギー反応を避けられるとは限りません。そのため、治療で使用する装置を一定の間装着し、問題がないかテストするケースもあります。

 

【注意】複数の金属にアレルギー反応がある場合はワイヤー矯正が難しいことも

複数の金属にアレルギー反応がある患者さんについては、アレルギー反応の出ない装置を選ぶのが難しく、ワイヤー矯正で治療を行うのが困難となることもあるでしょう。無理にワイヤー矯正で行うと健康に悪影響を及ぼすリスクがあるため、マウスピース矯正で治療することをおすすめします。

 

まとめ

装置に金属を使用していないマウスピース矯正を選択したりすることで、金属アレルギーを持っていても、ほとんどの方が問題なく治療可能です。

 

金属アレルギーの方がワイヤー矯正で治療を行う際は、まずどのような金属でアレルギー反応を起こすのかをパッチテストで確認し、アレルギー反応の出ない装置を選択する形で進めていきます。複数の金属にアレルギー反応が出る患者さんについては、ワイヤー矯正が難しいこともあるため注意しましょう。

 

歯列矯正を検討されている方は、ぜひ目白歯科矯正歯科へご相談ください。日本矯正歯科学会の認定医であり、矯正歯科専門で経験を積んできた院長が診るため、安心して治療を行えるでしょう。

 

監修:山澤 秀彦 (やまさわ ひでひこ)目白歯科矯正歯科/院長

 

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